今回はなかなか刺激的なタイトルです。
「ねじれたる愛」とは一体なんでしょうか。
曲がりなりにも11歳を自称するルナクルが書いても良いのでしょうか←
ま、いいっしょ(軽)
ドラクエシリーズについては、やっぱりストーリーが好きで長年プレイしているわけですから、そのストーリー内容に言及したくなることもあります。Twitter等ではネタバレしないように配慮していますが、ここはわたしのサイトなので、書きたいことを書きます。ただし、今回の内容は、ほぼ最新のストーリーに関わるので、非表示機能を使用しておきます。ネタバレに問題のない方のみ開いてお読みください。
ところで、Googleで「ねじれたる」を検索すると、レンダーシアに存在する「ねじれたる異形の大地」ばかり出てきます。「屈折した愛」とか「歪んだ愛」とか、そういうタイトルにしようと思っていましたが、ある意味ドラクエ10らしい表現ということで「ねじれたる愛の物語」にしておきましたw
なお、ヴェリナード建国にまつわるお話です。文字ばかりにならないよう、ゲーム画面のキャプチャを多用していますが、ここぞとばかりの長文ですのでご注意くださいw
ネタバレが含まれることを了承して開くヴェリナード建国前のウェナ諸島
現在のウェナ諸島全域は、ヴェリナードという王国が統治していますが、約600年前まで、この諸島にはコルレーン王国とジュレド王国という国があり、互いに数百年もの間、対立していました。それぞれの国名から推定すると、コルレーン王国は現在のレーンの村~コルット地方付近(諸島の南東にある島)に、ジュレド王国は現在のジュレー島(諸島の中央にある島)に、それぞれ存在したものと考えられます。
「暴かれし相貌」のストーリー中、「歌姫の絶望」の世界で描かれる時期からさらに10年程前、ジュレド王国側が一方的に休戦協定を破ってコルレーン王国に攻め入り、当時の国王を殺害しています。
同じVer.6.1のストーリーでは、閃光王カブが、約3000年前に「ドワーフ同士の殺し合い」が起きたことにひどく落胆していましたが、このように「ウェディ同士の殺し合い」も、少なくとも約610年前までは起きていたということです。わたしたちの時間軸から最も近い歴史では「オーガ同士の戦争」が「起きそうになった」ことがありましたが、それはわたしたち主人公の活躍で阻止されていますね。
そしてその後、その殺された国王の娘であるリナーシェが、コルレーン王国の女王に即位。彼女の育みの歌により、コルレーン王国を実りある豊かな土地へと変貌させ、その噂をジュレド王国にも自ら間者を使って喧伝しています。そもそも戦争の原因は、乏しい資源の奪い合いです。水に加護を与えることで、ウェナ諸島全体の土地を豊かにすることができれば、戦争する理由がなくなります。
リナーシェには年の離れた妹・アリアがいます。リナーシェと同じように育みの歌を唄うことはできますが、リナーシェほど強力なチカラはもちません。とはいえ、アリアも弱いながらも同様のチカラをもつことから、リナーシェ個人の能力というより、彼女たちの一族がもつ特異な能力だといえるでしょう。リナーシェは、その歌のもつチカラが、一族の中でもずば抜けて優れていたのだと考えられます。
そのような状況の中、ジュレド王国の国王ヴィゴレーから、女王リナーシェとの結婚、および王国の統一を打診されます。前述の経緯から、コルレーン王国にはジュレド王国へ悪感情を抱く者も多いのですが、リナーシェは「完全なる政略結婚」であることを自認しつつも、それにより両国間の争いがなくなるのであればと、この申し出を受諾するのです。コルレーン王国の民を、そしてアリアを守り抜きたいという強い意志が、この結婚を決意させたのでしょう。
かくして、白亜の王城、すなわち現在のヴェリナード城が建立され、ジュレド王国とコルレーン王国による統一国家として、現在まで続くヴェリナード王国が成立することが決まります。現女王ディオーレも「恵みの歌」により、ウェナ諸島に恵みの加護を与えていますが、そうした「歌のチカラ」は、リナーシェ、アリアの血筋が、代々受け継いできたものであるといえます。
リナーシェとヴィゴレー
リナーシェ自身が「完全なる政略結婚」と言っているように、誰がどう見ても政略結婚であることに疑いの余地はありません。
「歌姫の絶望」のストーリー冒頭で、ジュレド王国へ招かれて、育みの歌を披露するシーンがあります。枯れそうだった作物が次々に活気を取り戻し、力強く実るのですが、このシーンで国王ヴィゴレーも、随行している王弟カルーモも、その結果を見て驚嘆しています。純粋なカルーモからは、素直な驚きと敬愛が見て取れるのですが、ヴィゴレーはその悪人顔から、ちょっと何を考えているのかわかりづらい、どこか裏があるように見える部分もあります。
そしてリナーシェも、表面上はニコニコしていますが、かなりしたたかな面があることは、Ver.6.0で利用されたこともある、わたしたち主人公はよく知っているはずです。
リナーシェは交渉に長けているところがあり、この育みの歌も交渉の切り札でもあったのでしょう。自分がこのチカラを持っている限り、ジュレド王国もあからさまにコルレーン王国を見下すようなことはできまいと、このチカラを最大限に利用し、軍事力では劣るコルレーン王国として、ジュレド王国とあくまで「対等な立場」で統合させるため、有利に事を進めたい思惑があったと推察されます。
リナーシェの回想でも、その本心は隠されたままなのですが、リナーシェの部屋にある本棚には日記があり、そこには16歳の女王として、敵国ジュレド王国へ単身、和平交渉に赴いた際の本音が書き記されています。
このリナーシェという英雄は、Ver.6.0で初登場したとき、一部でキャバ嬢とまで言われていたんですよねw
確かにこの見た目で、しかもシナを作って「盟友さまぁ」と言い寄ってくるその様子は、わたしは実際の「キャバ嬢」さんをよく知りませんけれども、一般的に世に言う「キャバクラ」のイメージではありますね。決して表に本心を出そうとしない、表面上の笑いなんかも、そんな感じに見えます。
そういうミスリードをさせてしまう演出がニクイですよねっw
正直なところ、Ver.6.0でリナーシェと行動を共にした時は、この人物は何か裏がありそうには思ったものの、まだつかみどころもない印象でした。それは、Ver.6.1が公開される前に投票が行われた「第10回アストルティア・クイーン総選挙!」の結果にも、よく表れていますよね。
※圧倒的な最下位ですw
Ver.6.0の時には、正直あまり好感をもてなかったキャラでしたが、この日記を読んだ時は、リナーシェに抱いていた負のイメージが一変し、その内容には胸が詰まるような思いがしました。
ちょっと話が飛びますが、いろいろあって最後の最後では、今までのような「盟友さま」ではなく「ルナクルさま」と呼んでくれましたし、やっとわたしに心を開いてくれたのかなとも思っています。
一方のヴィゴレーですが、この人は本当に謎です。あまりにも謎すぎて、今回の記事を書いたようなものです。ずっとリナーシェのことばかり書いてきましたが、この記事の主人公はリナーシェではなくヴィゴレーなんですw
リナーシェとヴィゴレーの間に「愛」はあったのでしょうか……?
両者が政略結婚と認識して結婚するわけですし、この後に起きる「結果」を見ても、そこに愛など存在するはずもない、と思うでしょう?
ここでちょっと日本史に話が飛びますが、和宮親子内親王をご存じでしょうか。仁孝天皇の第8皇女(孝明天皇の妹)で、有栖川宮熾仁親王と婚約していたのですが、結果的にその婚約は解消され、江戸幕府第14代将軍である徳川家茂に嫁いでいます。これはまさしく時の幕府と朝廷による政略結婚そのもので、公武合体政策ともいわれます。
この話を長く書き始めると、もう一体何のブログなんだかわからなくなりますので、かいつまみますが、明らかに政略結婚でありながら、和宮と家茂の夫婦仲は悪くはなかった、と伝えられています。政略結婚だからといって、必ずしも仮面夫婦ばかりではないのです。
リナーシェとヴィゴレーも、確かに政略結婚ではあったものの、ウェディの統一国家を作る、同じ種族間での争いをなくす、という理念は、ふたり共通していたでしょう。ヴィゴレーはヴェリナードという新国家の初代国王となり、初代王妃となるリナーシェの育みの歌により、ウェディに富と繁栄をもたらす。そして、統一国家はとこしえに続いていく、その礎となる……はずだったのです。
国家としての損得勘定でいえば、リナーシェにもヴィゴレーにも利はあるのです。しかし結婚ですから、お互いに愛がなければうまくはいきません。
はたして、リナーシェとヴィゴレーの間に「愛」はあったのでしょうか?
前述のリナーシェの日記はもう1冊あり、そこには次の内容が書かれています。
単純に政略結婚であり、愛情など持つはずもないのであれば、ヴィゴレーはなぜ「何か月も 砂まみれになって」まで、希少な石を探したのでしょうか。そんなことをしなくても、愛のない結婚であれば、それこそ国王なのですから、誰かに取りに行かせるなり、市販の指輪を買うなり、適当な形で済ませることもできたはずだと思うのです。
その事実をカルーモから聞かされたリナーシェは、「彼に 愛を返そう」「誠意を尽くそう」と決意するのです。リナーシェにとってヴィゴレーは、決して彼女にとって「好みの男性」ではないように見えます。結婚はあくまでコルレーン王国の民のためであり、アリアのためなのですから。それでも、ヴィゴレーのこうした秘密を知ることで、ヴィゴレーからの愛を彼女なりに感じ取り、なんとかそれに応えようとした……という心情が、日記から読み取れます。
逆にヴィゴレーにとって、リナーシェが「好みの女性」だったかというと、やはりそうではないように見えます。ヴィゴレーという人物は征服欲や独占欲が強いといいますか。どちらかというと夫唱婦随、悪く言えば自分の言いなりになる女性を妻にしたいような気持ちがあったのではないでしょうか。リナーシェの物腰は柔らかでも一国の女王です。少なくとも「言いなり」にできるタイプではない。しかも国の繁栄を一手に担えるほどの強大なチカラを持っている…
リナーシェが「愛を返そう」と決意したのと同様に、ヴィゴレーも結婚を申し込み、それによって国家の統一を考えた以上、「妻を愛するように努めよう」という気持ちがあったのかもしれません。単純に「リナーシェを好きだ」という理由で求婚したわけではなく、互いに政略結婚と理解した上での結婚ですから…
おそらく、希少な石を探していた時のヴィゴレーは、様々な思いが去来していたのでしょう。単純に「好きな女性にプレゼントしたい」という気持ちだけではなかったように思います。ところがカルーモは、この人は見た目からも素直で誠実な人物だと推察されますので、ストレートに「好きな人にあげるプレゼントを一生懸命に探している」と、その兄の姿から感じ取り、そういう意図でリナーシェに耳打ちで伝えたのではないかと思われます。
そして、その耳打ちする弟の姿を見て、ヴィゴレーは「顔をしかめている」のです。「照れくさそうにしている」ではなく「顔をしかめている」のです。それも、耳打ちする弟の方を見て、です。
リナーシェの日記の文面からは、この何気ないやり取りから、ヴィゴレーの自分に対する「愛と誠意」を感じ取り、自分も「愛を返そう」と決意する様子が描かれているのですが、実際には、ヴィゴレーにはある種のどす黒い感情が芽生えつつあったのではないかと。これは完全にわたしの憶測にすぎないのは言うまでもありませんがw
そしてヴェリナード城が完成し、明日はいよいよ結婚というその夜に、ついにそのどす黒い感情が爆発したのか、事態はとんでもない悲劇へと向かってしまうのです…
なぜヴィゴレーは凶行に及んだか
結婚を翌日に控えて、ヴィゴレーはひとりで海を見ていたリナーシェに近づき、話しかけます。そしてようやく、リナーシェもヴィゴレーに少し心を許し始めたようにも見える、まさにそのとき。
あろうことか、リナーシェを殺害してしまうのです。
なぜ殺害するに至ったか。一応はヴィゴレー自身の言葉で語ってはいます。
これは確かにその通りなのでしょう。征服欲、独占欲の強い彼にとって、強大なチカラをもつ王妃は、自らの存在を脅かしかねない。だからそうなる前に芽を摘んでおくと…
しかし、しかしですよ。
もう王城は完成し、自らが国王となる新国家の建設も決まっている。確かにリナーシェの存在を脅威に感じる面があるにせよ、多少のことに目をつぶっておけば、ヴィゴレーは国家を統一した初代国王として、この先ずっと語り継がれていく、歴史に残る存在にもなれたのです。
それを目前にして、自らが招いたあまりにも愚かな行為によって、結果的に全て棒に振ってしまうことになるのです。
ここで彼はおかしなことを口走ります。
よりによって、リナーシェ殺害の罪をカルーモになすりつけようとします。
そして、その企みが成功すると考えた根拠を語ります。
カルーモ自身は、確かにリナーシェを敬愛のまなざしで見ています。憧れの女性とも見ているでしょうが、それは決して「恋慕」ではないように、わたしには見えます。ムービーで話を聞いていても、彼は非常に素直で誠実な性格ですし、間違っても兄の結婚相手に横恋慕するような感情は持っていなかったでしょう。
先程、リナーシェに「耳打ち」するカルーモを見て、ヴィゴレーが「顔をしかめている」という、リナーシェの日記における記述がありました。あれは、リナーシェが記した文面をそのまま受け取ると、「何か月も希少な石を探した」という事実を、リナーシェに教えていることに対して、「余計なことを言うな」という意味での「顔をしかめている」だと受け取れますよね。
実際は「リナーシェに耳打ちする」という、その姿に対しての「顔をしかめている」だったのではないかと、わたしにはそう思えてならないのです。つまり「自分の婚約者にのぼせ上がっている弟が、自分の婚約者といちゃいちゃしている」ように受け取ったのではないでしょうか。
そのあたりを総合的に考えると、ヴィゴレーは非常に猜疑心が強く、弟に対するこの心情は、おそらく「嫉妬」です。それも一方的な思い込みで勝手に嫉妬し、「自分を裏切った弟と恋仲だ」という思い込みから、自分を裏切った(と思い込んでいる)リナーシェに対する憎しみも同時に増幅させているフシがあります。その結果、ついにリナーシェを手にかけ、その罪をリナーシェと恋仲だと誤解している弟になすりつけるのです。
リナーシェにとどめを刺す寸前には、こんな残酷なことすら告白しているのですから。
劇団四季が上演しているディズニーミュージカル「ライオンキング」(原作であるアニメ映画も大筋は同じ)では、終盤にスカーがシンバにこう言います。
「ムファサを殺したのは、この俺だ!」
直後にシンバを崖から突き落とすつもりだったので、こんな余計なことを言ったものの、すぐさまシンバに逆転され、反対に突き落とされる(というよりも、バランスを崩して勝手に落ちていく)間抜けなスカーなのですがw
それと似たようなことをヴィゴレーは、わざわざこれから殺す相手に向かって言っています。残念ながらリナーシェが一命をとりとめて、ヴィゴレーに反撃するような機会はなかったのですが、たとえ強大なチカラを恐れて殺害するとしても、リナーシェに余程の憎しみがなければ、あえて死に行く相手にこんなことは言わないでしょう。
おまけに、リナーシェが最も守りたかった存在であるアリアを妻にするなどと言い放ちます。
これでもかとばかりに、リナーシェが死んでも死にきれない程の精神的苦痛を与え続けるのですから、ヴィゴレーのリナーシェに対する憎しみは常軌を逸しています。
もっとも、これが原因で、600年後にリナーシェが悪神化するなど、このときは誰も知りようがないのですが…
このセリフは少し前、自分が父王を殺したと明かす前のものですが、リナーシェは当然ヴィゴレー個人を「父の仇」だと知っている由もありません。ジュレド王国の兵士が父を殺したと認識はしていても、殺したのがヴィゴレー本人と知っているはずがないので、この時点でのヴィゴレーのセリフも、冷静に考えれば支離滅裂です。
この悪事は非常にあっさり露見し、カルーモの嫌疑は晴れ、ヴィゴレーは現在のジュレイダ連塔遺跡に幽閉されることになります。
まず、ヴィゴレーは、弟カルーモがリナーシェに「のぼせ上がっていたのは周知の事実」と言い切っていますが、国民からそれを「周知の事実」だと思われていなかったのは明らかで、むしろカルーモが不倫や殺人をするはずがない、ということの方が「周知の事実」だったのではないでしょうか。だからこそ調査に協力する人も多く、真相解明もスムーズに進んだものと思われます。
その調査に協力した中のひとりが、ヴィゴレーやカルーモの父にあたる、ジュレド王国の前国王です。父親なんですから、カルーモが殺人などするはずもなく、自らを押しのけて国王となったヴィゴレーこそが怪しいということには、真っ先に気が付いたことでしょう。
違和感があるのは、この犯罪計画のあまりの稚拙さです。たとえば、カルーモが冤罪で処刑されてしまい、600年経ってから主人公が様々なクエストを経て、彼の無実と事の真相を突き止め、彼の名誉を回復する、みたいに劇的な展開では全くありません。具体的な期間は語られていませんが、おそらく数日程度で、カルーモは釈放され、ヴィゴレーは投獄されているのです。
このことから、この殺人事件は、事前に綿密な計画が練られたものとは到底思えません。むしろ偶発的な衝動殺人に近いものがあったのではないでしょうか。リナーシェがひとりでいる姿を見つけて、その場で突発的に犯行を思いついた、とまでは言わないものの、具体的にリナーシェを殺そうと考えたのは、せいぜい2~3日前ではないでしょうか。
自らのアリバイ工作もしていなさそうだし、カルーモに罪を押し付けるなら、たとえばカルーモを現場近くで気を失わせて剣を持たせておくとか、何かしらの工作をしますよね。そういう形跡が全くなく、リナーシェの血痕と、自分の指紋がべったりついていそうな剣を、そのまま手入れしているような様子すらあります(あくまでアリアの回想シーンですが)。ミステリーの観点で見れば、犯罪として杜撰にも程がありますw
アリアとカルーモ
今回取り上げたヴェリナード建国にまつわるお話は、一種のサスペンスドラマのような展開ですが、ねじれたる愛がもたらした結果であるともいえます。憎しみを乗り越えてひとつの国を作ろうとした、まさにその寸前。ひとりの男の歪んだ愛、屈折した欲望が、誰も考えもしなかったような悲劇をもたらし、せっかく平和的な統合を控えてたのを台無しにしてしまうのです。
しかし、アリア、カルーモをはじめとする残された者たちは、事の真相を究明してヴィゴレーを断罪し、その悲しみを乗り越え、その後600年にわたるヴェリナード王国の繁栄の礎を築き上げ、子孫へのメッセージをも残すのです(300年前のバサグランデによる混乱の渦中で、一時失われてしまっていましたが)。
このアリアについて、天星郷のとある民家の本棚にある書物「星導秘録」によれば、天使からはなかなか見下された評価を下されているようです。(これはVer.6.2のストーリーを進める過程で入れる民家にあります)
アリアが亡くなったとき、彼女も英雄候補として天星郷へ招くべきとの提案がなされたようですが、統一国家を築き上げた功績の大部分はリナーシェによるものだからと、一笑に付されたとの記述があります。
わたしは、リナーシェの功績が英雄たるものであることに異議はないものの、新国家をまとめ上げた初代王妃アリア、初代国王カルーモの功績も、英雄に匹敵すると思っています。憎み合っていたジュレド王国、コルレーン王国の子孫たちが、ふたりの先導によって互いに手を取り合い、その結果として、600年続くヴェリナード王国は今も繫栄しているのですから。
なお、悪神化したリナーシェが、そのカルーモとアリアの築いた国ヴェリナードを「ヴィゴレーの作った国だから」という理由で滅ぼそうとしたり、さらには「ヴィゴレーの子孫」だと思い込んで、ふたりの子孫であるセーリアやオーディス王子にまで牙を向けたのは、自身がヴィゴレーに殺された後、ヴェリナードで何が起きたかを全く知らなかったためです。
リナーシェが亡くなってから起きた出来事を説明する役割を担う、リナーシェの導きの天使であったアルビデが、このことを彼女に説明しなかったのです。そのアルビデは、Ver.6.0の最後で死亡していますが、そのあたりの経緯をご存じない方は、ドラクエ10をプレイしてくださいw
亡霊ヴィゴレー
Ver.6.1で初登場したと思われているヴィゴレーですが、実はその亡霊が、ジュレイダ連塔遺跡にVer.3.0の頃から存在していたのはご存知でしょうか?
ちょっと今回、Ver.6.1のストーリーをプレイする前のヴィゴレーが、亡霊として何を語っているのか確認するために、まだ氷の領界あたりをくすぶっているスピカちゃんに行ってもらいました。
スピカちゃんのストーリー進行状態では、彼が話すことはこれだけでした。「DQ10大辞典」の記述によれば、「もはやあの女を手にかけた我が悪名さえも歴史の彼方に消え去ったことだろう……。」というセリフも存在したようなのですが、少なくとも今回スピカちゃんに取材に行ってもらったときには、そういうセリフはありませんでした。どこかのタイミングで元のセリフが削除されたのか(ネタバレになりますからね)、何かしらのフラグで変化するのかは、わかりません。
Ver.3.0というのは発売が2015年4月なので、今から7年も前に「ある女性を殺した罪人の亡霊がジュレイダ連塔遺跡に存在する」という伏線が張られていて、それが今回のストーリーで突如回収されたわけです。言うまでもなく、わたし自身はこんな亡霊の存在を完全に忘れていましたが、Ver.6.1の情報公開でヴィゴレーの姿を見て、すぐにピン!ときた人もいるようです。さすがですw
この遺跡には5人の亡霊がいますが、今回の事件にかかわる内容を話している人もいました。
この亡霊の「主」とはヴィゴレーのことですが、「いわれなき罪」と言っています。ヴィゴレーがリナーシェを殺害したのは冤罪だとでもいうのでしょうか。わたしはさっき殺害現場を見てきたんですがw
ただ、ちょっとここで気を付けなければならないのは、わたしたちがムービーで観た光景は、あくまで「リナーシェの記憶」であり、わたしたち主人公がその時代へ行って実際に見てきた光景、あるいは第三者が撮影した映像ではない、という点です。
とはいえ、どういうメカニズムなのか全くわかりませんし、あの光景が事実に基づかないリナーシェの作った架空のものだとすれば、様々な前提が崩壊してしまうので、やっぱりあれは「史実を見た」のだと考えるべきなのでしょうけどw
今回の事件に関連のあるNPCのセリフは以上でした。ちなみに、スピカちゃんの職業はたまたま僧侶で、サポート仲間も借りず、ヤリなど僧侶が装備できる武器も持たない状態でしたが、ジュレイダ連塔遺跡って、敵にぶつかったり追いかけられたりしたとき、逃げることができない場所なんですよねw
はい、閑話休題w
このヴィゴレーの亡霊ですが、Ver.6.1のストーリーをクリア後に紹介されるクエストNo.706「宝の価値」で、一連の事件を知った状態で彼に会いに行くことになります。このクエストは、Ver.1から何度か登場してきた小悪党キャスランの物語でもあるのですが、そのあたりは全て割愛しまして、ヴィゴレーに関わる部分のみ書いていきます。ただでさえ1万字を超えていますのでww
キャスランに「古びた指輪」を盗まれ、すっかり気落ちしてしまったヴィゴレーの亡霊ですが、わたしたち主人公がそれを取り戻し、ヴィゴレーに返すと、次の言葉を聞くことができます。わたしたちは、リナーシェの記憶を通じてヴィゴレーのことを知っていますが、生前に面識はないので、彼はわたしのことを当然知りません。
いやヴィゴレーさん饒舌すぎるでしょw
こんな縦長画像を作ることになるとは←
まあ、数百年もこんな地下遺跡で地縛霊のようになっていて、取り巻きの部下たち(の亡霊)はいるものの、こんな話を聞いてくれる人など現れるはずもなく、そこになぜか姿を見ることができて、しかも指輪を取り戻してくれた、よくわからない冒険者の少女がやってきたから、何か語りたくなったのかもしれませんねw
そして語られた内容は、11歳のわたしには難しすぎました←
難しいながらも、こうではないかな?と感じたことを書いてみますと、やっぱりヴィゴレーのリナーシェに対する愛はあったのでしょう。リナーシェの笑顔を「どんな花より 宝石よりも美しく。」と、彼がそう感じたのは紛れもない事実です。
ところが、その笑顔が「ただの交渉道具だった」と思い込んでしまったんですね。リナーシェにとって笑顔も交渉道具ではあったことは否定できませんが、「私の弟は すぐに 骨抜きにされた。」というくだりは、かなり強い思い込みのように思えます。
事件が発覚後、アリアから突き返されたという指輪は、生前は常時そばに置き、亡くなった後は棺に入れるよう遺言までしています。例の、何か月も探したという希少な石が埋め込まれた指輪なのでしょう。
「これだけは 誰にも渡したくない。」
これは第三者が理解するのが非常に難しい感情なのかもしれません。
普通の感覚でいえば、「彼女を愛していたのなら殺すはずがない」のですが、古今東西の様々な事件の概要を見ていると、必ずしもそうとは言い切れないんですよね。
「好きでたまらないから殺す」というような事件も、ストーカーによる殺人など、実際に数多くあります。別れ話のもつれで殺人事件が起きることもあります。別れ話がもつれるということは、どちらかは別れたくないわけですよね。なぜ別れたくないかというと、好きだからですよね。別れたい側が殺すのなら、まだ犯罪心理としてわからなくもありませんが、実際には別れたくない側が殺してしまった事件もわりと起きていますよね。
ヴィゴレーは、リナーシェをひとり占めしたかった(独占欲)。
しかし、その笑顔は別の人間にも向けられ、とりわけ弟カルーモへ向けられた笑顔は許しがたいものだった(嫉妬心)。
リナーシェは強大なチカラをもっている。このままでは、相思相愛である(と思い込んでいる)カルーモと協力して、自分を排除する動きに出るのではないか(猜疑心)
それなら、そうなる前に殺すしかない。
こういうシナリオを思い描き、行動に出てしまったというところなのでしょうか。
これはあくまでわたしの解釈であって、全く別の解釈をされる方も多いと思います。わたしはカルーモを善人だという前提で語っていますが、一連の事件はカルーモの陰謀だったという解釈も成り立ちます。確かに、この事件を経て、ヴェリナード初代国王という地位を得た、つまり最も得をしたのはカルーモであることもまた事実です。
ジュレイダ連塔遺跡に存在する、生前ヴィゴレーの部下だった亡霊たちの中には、本当にそのように解釈している人もいます。
この人って少しベルトロさんに似ている気もしますがw
わたしたちは、リナーシェの記憶を通じて、ヴィゴレーが実際にリナーシェを殺害するシーンを見ていますから、これもヴィゴレーがリナーシェを殺害するようにカルーモが仕向けたのだとすれば、カルーモは、目的のためならリナーシェの命を奪うことも厭わない策士、ということになります。ちょっと信じがたい陰謀論のように思えます。
そしてリナーシェをあからさまに悪く言う亡霊もいます。
彼女の主張は、ヴィゴレーがリナーシェを殺す際に言っていた内容に近いですね。
続いて、指輪を盗んだキャスランに激怒して呪いをかけ、わたしたちと一戦交えた亡霊たちの話です。
彼らは、ヴィゴレーの罪を、実はわかってはいるのです。
その上で、「強く賢く 頼もしい 理想の王」であったヴィゴレーを慕い続け、死してなお忠誠を誓い続けているのです。
そして、書物庫にいる女性の話です。
このように、生前のヴィゴレーには、彼の犯罪を知ってなお慕い続け、最後まで行動を共にした人たちがいます。中でも書物庫の女性の話を聞くと、とても優しい心をもった王のようにすら思えます。
リナーシェを殺害するシーンを見ると、ヴィゴレーは悪人そのものです。悪人顔でもありますしw
しかし、このジュレイダ連塔遺で亡霊たちの話を聞くと、民からは良き王として慕われていて、さすがに犯罪が露見してからは離れていく人も多かったとはいえ、それでも最後まで彼の傍に居続けた人もいたことも、また事実なのです。
最後にヴィゴレーの父、すなわちヴィゴレーが押しのけて自らが王となった、その前王の話です。
ヴィゴレーの取った行動は、決して許されるものではないでしょう。しかし、どこかで道を踏み外すことさえなければ、名君となれる可能性もありました。
彼自身が言うように、この先リナーシェと再会することは叶わないでしょう。
リナーシェは、最愛の妹アリアがカルーモと結婚し、ヴェリナードの初代国王夫妻となったことを知りました。同時にヴェリナードが「ヴィゴレーの国」ではないことも、今では知っています。この先、ヴィゴレーの亡霊と会うようなことがあれば、そして「後悔に囚われている」と話すヴィゴレーからの謝罪を受ければ、あるいは彼を赦すというような展開もあり得るのかもしれません。とはいえ、あの最期に味わわせられた絶望と、この男に父王も殺されているという事実を考えると、そう簡単にはいかないだろうな…という気もします。
そしてヴィゴレーは、今日もジュレイダ連塔遺跡の墓場で、自らの犯した罪と向き合い続けているのです……
おわりに
ドラクエシリーズのストーリーは、明るく健康的で希望ある未来に向かって進む!みたいな、光あふれる内容だけではなく、非常に屈折していて、終わった後にとんでもなく憂鬱な気分になるものも少なくありません。
ドラクエ7は、序盤の物語からして非常に憂鬱なことで有名ですが、思い返してみれば、ピサロとロザリーの物語であったり、父を眼前で殺害された挙句、教団の奴隷に身を落とされて10年過ごす主人公であったり、なかなかエグいストーリーがそこそこあったのも事実です。
ドラクエ10でも、その点は決して負けてはいません(勝ち負け?w)
なんせ、Ver.1のシナリオを中心となって手掛けたのは、あのドラクエ7の序盤「ウッドパルナ編」や「ダイアラック編」を手掛けた藤澤仁さんであり、Ver.2以降のシナリオを引き継いでおられるのも、同じくそのドラクエ7でシナリオアシスタントを務めた成田篤史さんが中心となっていることもあってか、どす黒い感情といいますか、人間(ここでは種族としてではなく、アストルティアにおける知的生命体としての人間、人類)の恐ろしさが描かれたシナリオは多いです。
#DQ10 6.1~6.2を通じて思うのは(ストーリーには触れませんが)、大魔王より人間の方が、よっぽど怖いw
そのへんはDQ7にも通じるところがありますね。
— ルナクル(DQ10)/Lunacle(FF14❖Atomos) (@dqx_lunacle) July 7, 2022
レーンの村では「少女探偵ルベカちゃん」というクエストシリーズがありますが、そのコミカルなタイトルと打って変わって、黒ドラクエ10の代表ともいうべき、激しいどす黒さです。なんせ、村人がよってたかって幼い少女に瀕死の重傷を負わせ、薬品で声まで奪い、しかも最終的にその被害少女は自ら滝に身を投げるんですからね……
現実世界でも、人間のどうしようもなさ、そしてそのやるせなさを感じることは多々あります。最近のロシアによるウクライナ侵攻を挙げるまでもなく、人間が戦争などの極限状態において、悪魔以下としか形容しようもない行為をすることは、歴史が物語っています。最近も選挙演説中の元総理が銃撃されるという、あまりにも痛ましい事件が、この日本で起きてしまいました。そうした様々な殺人事件なんかもそうです。非常に残忍で、むごたらしい。他者の幸せを破壊し、生命すら殺めてしまえという考え方は、古今東西あとを絶ちません。そういうことを考えていくと、本当に人類ってどうしようもない存在だなと、厭世的な気分にもなってしまいます。
だけど、どうしようもない人類だから、それならいっそのこと滅びてしまえばいいのか?というと、そこには必死で抗いたい自分もいるのです。
ドラクエ10においても、「こんなどうしようもない種族(人類)は滅ぼしてしまえ」と、あるいはそれに近いことを考え、実行に移そうとする敵が度々登場しています。
端的にいえばVer.6で登場する「悪神」たちも、ほとんどの行動原理はそれです。ある種の呪いで極端な考えが増幅させられているとはいえ、「こんなどうしようもない奴らを一度滅ぼしてしまった方が、より良い世界を築ける」と、そういう趣旨の発言があります。それはつまり、その「悪神」たちも、それまで表には出していなかったものの、心の片隅にはそういう考えもあったからこそ、その悪意の部分が強められ、悪神化したともいえるわけです。
そして、それらに必死で抗うのが、わたしたち主人公です。
人類は本当にどうしようもない存在といえる内容を散々見聞きさせられ、それでも必死でその人類を滅びから守ろうとするのです。
そして、どうしようもない人類のひとりであるわたしたちも、そんな自身の投影たる主人公の姿を見て、様々なことを考えさせられるのです。じつに奥の深い物語だと思っています。
いやぁ~、ドラクエ10って本当にいいものですね!(水野ルナオ←)
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今回の記事には、ドラクエ10 Ver.6.1のメインストーリー「暴かれし相貌」と、クエストNo.706「宝の価値」の重大なネタバレを含みます。また、Ver.6.2のストーリーを開始後に読むことのできる本棚の書物についても、その内容に触れている箇所があります。